

その後、薬が改良されて、できるだけ社会復帰できるように、副作用の少ない薬物が開発されてきて、さまざまな社会復帰トレーニングが行われています。
現在の問題点のひとつと感じるのは、ガイドラインという薬物治療のやり方の指針には、効果のみに視点が置かれていて、副作用にはほとんど目を向けられていないところにあります。
たとえば実際のところ、私がすでに治療されている方々の主治医となった場合、薬物を調整する理由の半数以上は副作用の苦痛の軽減の為です。
幻聴や漠然とした不安などの症状の苦痛と、薬物による副作用の苦痛の両者を本人と相談しながら、最も楽なように薬を調整し、薬を減らしたり変更したりします。
もう一点大切なことがあります。これは殆どまったく医師の間でも知られていないことですが、統合失調症でも、トラウマが悪影響を及ぼしていることがあります。
発症した折に、大変な恐怖に襲われることが多いものですが、これがトラウマ体験として残り、後々の社会復帰の妨げとなっていることがあるのです。
外出したり、学校に行ったりして人と交わることができないのは、発症時の恐怖が残っている過去の体験の為であることがあり、このトラウマは絶対に薬で治療することは不可能なので、いくら薬物を増やしても副作用ばかりが出て効果はありません。そのような場合にはそのトラウマを処理することが必要な治療なのです。